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コロナ起源論争の焦点、武漢ウイルス研究所長に“抜擢”された30代女性所長の経歴 - BUSINESS INSIDER JAPAN

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5月下旬、中国国営テレビの取材に答える武漢ウイルス研究所の王所長。

中国国営テレビより

トランプ米大統領が5月29日(現地時間)、「新型コロナウイルスの初動に問題がある」として、世界保健機関(WHO)との関係を解消すると表明した。トランプ大統領は、ウイルスが武漢ウイルス研究所から流出したと主張し、WHOを中国の「操り人形」と批判している。

ウイルスの研究所流出説の焦点となっているのが、重症急性呼吸器症候群(SARS)の起源がコウモリだと証明し、「コウモリ女」との異名を持つ石正麗氏だ。

5月初めには、SNSで「石氏が研究所の秘密文書を持ってフランスの米大使館に亡命申請した」との情報が日本を含む世界で大拡散した。

その石氏は全国人民代表大会(全人代)開催中の25日、長い沈黙を破って中国メディアのインタビューを受け、科学が政治に利用されることに不満を表明した。前日には武漢ウイルス研究所の王延軼所長も取材に応じ、「ありもしないことをつくりだそうとしている」と述べ、同研究所からウイルスが流出したなどとする疑惑を否定した。

2人とも中国の国際ニュースチャンネルのインタビューを受けており、中国政府が石氏の亡命説を否定し、武漢流出説への反論を本格化させたと考えられる。

実は王延軼所長は30代の女性所長であることから、流出説とは別次元のところで中国ネット民の「時の人」にもなっている。

SNSに研究所流出説を気にする投稿

石研究員

武漢ウイルス研究所の石研究員は「コウモリ女」との異名を持つ。

複数の資料によると、石氏は1964年生まれで、武漢大学出身。修士終了後に1年間フランス語を勉強し、モンペリエ第二大学で博士号を取得した。その後は、数回の海外滞在を挟みながら、武漢ウイルス研究所で研究を続けている。

石氏は2013年に科学誌ネイチャーでSARSウイルスの起源がコウモリだと証明する論文を発表して名を上げ、「コウモリ女(バットウーマン)」と異名がついた。米大学の教授とSARSに関する共同研究も行っており、石氏自身と米研究者との関係は良好のようだ。

新型コロナウイルスが武漢で感染爆発し、ウイルスと研究所の関わりを疑われるようになったことは、本人も相当気にしていたとみられ、2月2日には、メッセージアプリWeChatの友人向け投稿に、

「新型コロナウイルスは大自然が人類の文明生活習慣に与えた罰だ。命を賭けても、これが実験室とは関係ないと宣言できる」

とつづっている。

「1980年代生まれの所長」として注目

一方、武漢ウイルス研究所の王延軼所長も5月24日、国営テレビのインタビューに応じ、研究所流出説について、

「ありもしないことをつくりだそうとしている。研究所は2019年12月30日に初めて原因不明肺炎のサンプルを受け取った」

と述べた。

王所長は1981年生まれ。2018年に37歳の若さで所長に抜擢され、一部で「同レベルの組織では最年少所長の一人」「80後(1980年代)生まれの所長」と注目されたが、一般市民からは遠い存在だった。

本当の意味で時の人になったのは、新型コロナが発生し同研究所が「台風の眼」になってからだ。

資料によると、王所長は北京大学で生命科学を専攻し、コロラド大学大学院で修士留学、2006年に武漢大学で講師の職に就き、20代で副教授(日本の准教授に相当)に昇任。博士学位を取得した。

ウイルス研究所に転籍したのは2012年3月。2015年に副所長に昇格し、2018年に所長に就任した。

王所長は20代の頃から論文を多く発表しており、若手のホープであったのは間違いないようだ。

1月末の「双黄連事件」で全国区に

その王所長が国民レベルで注目されたのは、1月末の「双黄連事件」だ。

中国政府は1月20日に新型コロナウイルスの拡大を正式に公表し、23日に武漢市を封鎖した。突然、恐ろしいウイルスの存在を知らされた中国人の間では、予防法や治療薬に関する情報が乱れ飛んだ。

そんな中、新華社が1月31日「上海薬物研究所と武漢ウイルス研究所は、共同研究で漢方薬の双黄連内服液が新型コロナウイルスを抑制する効果があると発見した」と報道。報道をきっかけに、人々や薬局に双黄連内服液を買いに殺到し、開店10分で売り切れた店舗が続出した。

双黄連内服液は一般感冒薬、つまり風邪薬のようなもので、「新型コロナに効く」との情報には疑義も続出、新型コロナ対策上級専門家グループの一員である李蘭娟氏や政府系メディアの人民日報が、「研究結果は臨床試験を経ておらず、一般の人がコロナ対策として自己判断で飲まないように」と注意を呼び掛ける事態となった。

ちなみに双黄連内服液の効果は今も論争および品薄状態が続いている。

学歴と職歴に疑義広がる

研究所

新型コロナウイルス起源論争の焦点となっている武漢ウイルス研究所。

REUTERS/Stringer

「双黄連事件」で武漢ウイルス研究所への注目が高まったことで、ネット民たちは30代女性所長の存在に気付いた。科学者である王所長のプロフィール多くは判明しておらず、そこからネット上での大捜索が始まった。その結果、

  • 王氏は2000年に北京大学に入学したが、一般入試ではなく芸術やスポーツに優れた人物に適用される特別入試で合格している。
  • 夫が14歳年上の著名な免疫学者、かつ武漢大学副学長で、夫のコネで現在の地位を手に入れた。

という憶測が広がった。

王氏が北京大卒であることは疑われていないが、中国では推薦入試やAO入試は日本ほど一般的でなく、「なぜ芸術・スポーツ枠で入った学生が生命科学を専攻しているのか」と指摘されている(当時の合格者名簿らしきデータが拡散した。ただしデータの真偽は明らかになっていない)。

王所長の夫が著名免疫学者で現在武漢大学の副学長であることは事実で、経歴を調べると王所長が北京大に在籍していた期間に、夫も同大で教鞭を取っている。夫が2005年に武漢大学生命科学学院(学部に相当)院長に就任した翌年、王所長も同大で職を得ているため、関係性や何らかの忖度が働いたことは間違いないと見られている。

そのため、ネット上では王所長の所長としての資質、マネジメント能力を問う声が広がり、また、新型コロナ対策の初動の遅れや情報の隠ぺいが明らかになると、夫も研究者界隈で批判を受けたという。

画像などは相当出回っていた王所長が、メディアに姿を現したのは4月3日、武漢ウイルス研究所の会議で、「2020年の事業報告」と「新型コロナウイルス対策」の報告を行う姿が報じられた。そして5月24日、世界に発信するために表舞台に登場した。

中国メディアのインタビューで王所長は専門知識を披露しながら米国の主張に反論し、その堂々とした姿には好意的な評価も寄せられている。とは言え、ここまで世界的な注目を浴びるようになった研究所のトップの任に堪えられるかどうかは未知数で、その手腕や人物像、さらには中国政府の動向にさらなる関心が集まっている。

浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。現在、Business Insider Japanなどに寄稿。新著「新型コロナウイルス VS 中国14億人」

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May 30, 2020 at 07:50AM
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